診断は、最近では2010年にアメリカリウマチ学会と欧州リウマチ学会が共同で分類基準を改訂しました。 診断基準でなく分類というところがミソです。
重要なのは、チャートの2つ目『より可能性の高い他の関節炎が考えられる』かどうかです。つまり除外診断を行う必要性があります。
現在、日本リウマチ学会から『新基準使用時のRA鑑別疾患難易度別リスト』が出ています。
鑑別難易度
高 | 1.ウイルス感染に伴う関節炎(パルボウイルス、風疹ウイルスなど) 2.全身性結合組織病(シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、皮膚筋炎・多発性筋炎、強皮症) 3.リウマチ性多発筋痛症 4.乾癬性関節炎 |
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中 | 1.変形性関節症 2.関節周囲の疾患(腱鞘炎、腱付着部炎、肩関節周囲炎、滑液包炎など) 3.結晶誘発性関節炎(痛風、偽痛風など) 4.血清反応陰性脊椎関節炎(反応性関節炎、掌蹠膿疱症性骨関節炎、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患関連関節炎) 5.全身性結合組織病(ベーチェット病、血管炎症候群、成人スチル病、結節性紅斑) 6.その他のリウマチ性疾患(回帰リウマチ、サルコイドーシス、RS3PEなど) 7.その他の疾患(更年期障害、線維筋痛症) |
低 | 1.感染に伴う関節炎(細菌性関節炎、結核性関節炎など) 2.全身性結合組織病(リウマチ熱、再発性多発軟骨炎など) 3.悪性腫瘍(腫瘍随伴症候群) 4.その他の疾患(アミロイドーシス、感染性心内膜炎、複合性局所疼痛症候群など) |
以上の疾患群を全て鑑別したうえで、診断を進めます。このスコア表を用いることにより、関節リウマチの診断が以前より比較的早期にでき、早い段階で抗リウマチ薬の使用が出来るようになりました。
目標
・臨床的寛解:薬剤を使用しながら、リウマチの症状がない状態
・構造的寛解:薬剤を使用しながら、関節破壊を未然に防ぎ、進行が防止できる。
・機能的寛解:薬剤を使用しながら、関節の機能を残せる。
これに、分子標的治療薬(生物学的製剤・低分子医薬)を使用することで、
・休薬時期(Drug Holiday):休薬できる。
・完治 :薬剤を中止しても、再燃しない。
というゴールを得られることがあります。
ではなぜ、早期に抗リウマチ薬を使用しないといけないのでしょうか。
関節リウマチとは、関節が壊れて機能障害を来してしまう、障害者になってしまう可能性があるため、関節破壊抑制効果のある薬剤を早期に使用する必要があるのです。
- 抗炎症作用・鎮痛効果
- ステロイドや消炎鎮痛剤などがこれに当たります。
しかし、これらは長期間使用を続けると副作用も出やすく、限定的な使用が望まれます。
- 関節破壊抑制
- ステロイドや消炎鎮痛薬では関節破壊抑制が得られないために、早期診断・早期治療が求められるようになってきました。
以前の診断基準では、少なくとも6週間診断に要しその間に関節破壊が進行してしまう方も少なくなかったのです。
しかし、関節破壊抑制効果の高い抗リウマチ薬は、どれも免疫力を抑制するために慎重に使用する必要があります。
- 古典的抗リウマチ薬(DMARDs)
- 1.メトトレキサート
2.レフルノミド
3.サラゾスルファピリジン
4.イグラチモド
5.タクロリムス
に加え、金製剤などが古典的DMARDs(抗リウマチ薬)と言われるものです。
最近では、分子標的治療薬のなかでも『生物学的製剤』といって、最新のバイオテクノロジー技術を駆使して開発された、生物が産生した蛋白質を利用して作られた薬剤もあります。
- TNFαを抑制する薬剤
- 1.レミケードR(インフリキシマブ)
2.エンブレルR(エタネルセプト)
3.ヒュミラR(アダリムマブ)
4.シンポニーR(ゴリムマブ)
5.シムジアR(セルトリズマブ・ペゴル)
- IL-6を抑制する薬剤
- 6.アクテムラR(トシリズマブ)
- T細胞抑制する薬剤
- 7.オレンシアR(アバタセプト)
種類 | 名前 | 投与方法 | 点滴 投与 時間 |
自己 注射 可能 |
投与間隔 | 薬価 | 使用量 | 月額50㎏ | |
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TNFを 抑制する 薬剤 |
レミケード | 点滴 | 2時間 | 2週・6週・その後4~8週毎 | 89,536円(100㎎) | 3~10㎎/㎏/1~2か月 | |||
エンブレル | 皮下注射 | ○ | 1週毎 | 15,746円(25㎎) | 25~50㎎/週 | 124,276円 | |||
ヒュミラ | 皮下注射 | ○ | 2週毎 | 65,144円(40㎎) | 40~80㎎/2週 | 130,288円 | |||
シンポニー | 皮下注射 | 院内 | × | 4週毎 | 126,622円(50㎎) | 50・100㎎/4週 | 126,622円 | ||
シムジア | 皮下注射 | ○ | 2週・4週・その後2週または4週毎 | 63,494円(200㎎) | 開始後3回は400㎎/回、200㎎/2週か400㎎/4週 | 126,988円 | |||
IL-6を 抑制する 薬剤 |
アクテムラ | 点滴・ 皮下注射 |
1時間 | ○ | 4週毎(点滴) /2週毎(皮下注) |
39,291円(162㎎) | 8㎎/㎏/4週(点滴)・162㎎/2週(皮下注射) | 78,582円 | |
T細胞を 抑制する 薬剤 |
オレンシア | 点滴・ 皮下注射 |
30分 | ○ | 2週・4週・その後4週毎(点滴)/1週毎(皮下注) | 27,947円(125㎎) | 500㎎/60㎏以下、750㎎/60-100㎏以下、1g/100㎏以上(点滴)、125㎎/回(皮下注射) | 111,788円 |
※表は横にスクロールしてご覧ください
また、分子標的治療薬のなかで低分子医薬と言われるものでヤヌスキナーゼ阻害薬である
8.ゼルヤンツR(トファチニブ)
も出てきました。
しかし、最近の薬剤はどれも高額であり、一番のネックとなっております。
また、後発品としてバイオシミラ―というものが出てきておりますが、分子量が大きく異なっているものなどあり、先発品とリスクが同様であるとは一概にはいえそうもありません。